サブスク論争|好きな音楽を好きに持ち歩いて好きに消費すればいい

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こんにちは、HORNnet編集部です。
MUSICA 2020年1月号を読んでいたんですが、面白い特集を見つけました。「THE YEAR IN MUSIC 2019」じゃないですよ。あれも毎年楽しみにしているんですが、いろんなアーティストに2019年のベストアルバム、ベストソングを聞くコーナーがあったんですよ。
それぞれ2019年のベストアルバムを紹介していってそれについてコメントを書いている短いインタビュー企画なんですが、そのベストアルバムでもありません。

その中に一つ、こんな質問があったんですね。

2010年代は、日本においても、リリース&リスニング環境という発信側&受け手側の双方の意識の変化、そして音楽的な多様化に伴い、大きな過渡期を通過しているという印象を持っています。その中で、現状に面白さを感じている方・歯がゆさを感じている方、どちらもいらっしゃることを様々な方に取材をさせていただく中で感じています。あなたが今をどのように捉え、どのように感じながら音楽活動をしているのかを教えてください。

良い質問ですよね。この10年、音楽業界にあったいちばんの変化といえば「サブスクリプションサービス」の登場です。Appleミュージック、Spotify、Amazonプライムミュージックなど、いろんなサブスクリプションサービスが登場しました。
「サブスク限定」といって、CDを刷らずにリリースすることも特に新しくなくなってきています。

つまりこの質問は、「アーティストとしてサブスクってどうですか?」って聞いてるんですね。これは楽しみ。正直、音楽好きの間でもサブスクの評価は様々です。やっぱりCD買うべきっていう意見もありますし、いろんな音楽に出会えるし、安く済むから大歓迎、という意見もあります。

個人的な意見は置いておいて、今活躍している、これからさらに活躍していくアーティストがサブスクをどう考えているのかすごく興味があります。

あいみょん−CDってかっこいい

あいみょん

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手元に残る音楽、CDは私にとって必要なものです。それは憧れもあるからだと思います。CDってやっぱりかっこいい。
でも、私が音楽を自由にやらせてもらっているのと同じで、聴き手も自由で良いかと思います。
難しいことはあまり分からないです。

まさにサブスクシーンで売れたアーティスト、あいみょんです。路上から出てきて、サブスクで話題になりました。そんなあいみょんがいう「CDってかっこいい」は良いですね。路上で歌ってるアーティストのCDって安っぽいんですよ。薄くてぺらぺらで、帯もないプラケース。でも案外割れないんですよね。あれ。なんかそういうのに惹かれる魅力ってあります。
これからの時代、便利さとか安さとか考えたらサブスクになっていくのは絶対変わらない。そうなると、「CDだから表現できるかっこよさ」が大事になってきそうですね。
特典DVDとかじゃなくて。結局特典とかそういうコンテンツもYouTubeの方が便利で、価値を感じなくなってしまいます。「かっこよさ」っていうニュアンスが大事なんだと思います。デザインがいいとかとはまた違う、部屋に並べたくなる感じというか。

藤原聡(Official髭男dism)-音楽が誰にでも触れられるように

リスナー自身が一番豊かな人生を送れるような音楽との関わり方を、それぞれが選べる時代はすごく素晴らしいと思います。だからこそ、極力誰も置いていかないように、誰でも自分に合った方法で、手を伸ばせば自分たちの音楽に触れてもらえるように活動していきたいなと考えています。

また人生とか深いこと言ってますね、藤原さん。アーティスト側がどう考えるのかはともかく、自分たちの音楽をいろんな人に、いろんな状況で聴いて欲しいなら、手を伸ばせば届くところに音楽をおいておく必要があります。今はそれがサブスクなんですね。一昔前ならTSUTAYAとかタワレコの良い場所においてもらうとかだった訳ですけど。
藤原さんが言いたいのは、アーティスト側も変化しないといけないということですかね。昔と今とでは音楽との関わり方、届け方が違うよっていう。

山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)-答えは見えている

音楽の聴かれ方が変わることに全く抵抗はありません。むしろ次何を仕掛けるか?、何を大切にすべきかが大事だと考えています。ある程度自分の中でも答えが見えているのでワクワクしかないですね。

勝手なイメージでCD派だと思っていたTHE ORAL CIGARETTESの山中さん。サブスク大歓迎で、むしろその中で何を仕掛けるかを既に考えているようです。すごいですね。サブスクとの付き合い方ってまだ多くのアーティストがわかっていないと思うんですよ。CDだったらプレスの仕方とか、ジャケットのデザインとか、あとCDショップとの交渉とか、いろいろあるんですけど。
でもサブスクってレーベルとかついてない個人でも、プロのアーティストと同じ土俵にすぐ出せます。でも出したあとどうすべきか、どう出すかっていうのがまだわかっていないんですよね。そのせいで、サブスクで単純に売り上げが減ったアーティストも少なくないと思います。
THE ORAL CIGARETTESが次に何をするのか楽しみですね。答えはもう見えて、ワクワクしているんですから、かなり面白い、サブスク時代ならではのリリースかイベントを考えているんだと思います。

斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)-良い音楽を鳴らすだけ

リスナーの楽しみ方は人それぞれだと思うので、音楽家にできることはいい音楽をいい音で鳴らす努力を続けること。それだけ。

シンプルでかっこいいですね。UNISON SQUARE GARDENもいろいろ新しいというか、現代的な音楽をやっていますけど、なんだかんだでロックンロール。演奏力だけじゃなく、いろんな面で音楽性が高い。だから言えることですね。
「音楽家にできることはいい音楽をいい音で鳴らす努力を続けること。それだけ。」って無駄にかっこいい。でも多分、いい音楽をいい音で鳴らす以上のこと、考えてると思うんですよね。

はっとり(マカロニえんぴつ)-ヒリヒリした生き様を投影する

はっとり(マカロニえんぴつ)-ヒリヒリした生き様を投影する

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さっきの回答に重なりますが、音楽シーンにおける今の流れを僕自身は肯定的に捉えています。中身があって、かつ面白い方に自然と人は集まると思うし、ロック・ポップスにおいて、手軽にサウンドは真似し放題(持ち出し可能な有難い参考文献が溢れているから)だけど、いつの時代も歌詞と歌声に関してはどうしたってその人特有のものになるので、いかにヒリヒリした生き様を作品に投影するかがより重要になってくるんじゃないかなあ、と。

さっき、というのはこの前の項目で、SNSやストリーミングサービスについて触れていた件です。作品がを生み出してから発信するまでのスピードと、発信者の数が増加していること、そしてプロダクションに拾われなくても注目を浴びるチャンスができたこと、リスナーもメディアのプロモーションではなく、自分の感性で選べる、つまりリスナーが敏感になって、より音楽の中身が重視されるようになった、といったことを言っていました。

まさしくその通りで、ロックなんか真似し放題、探したら似たような曲が必ず見つかります。それはパクってるとかじゃなくて、本当にいいものがある程度出尽くして、あとはそれをどういう風に表現するか、という段階に来ているからだと思います。
実際、YouTubeの素人の弾いてみたでも、ボカロPでも、プロレベルの演奏、音楽をする人はいっぱいいます。ただいい音楽、というだけじゃ届かない。自分にしか出せない、その人だけのヒリヒリした生き様を魅せていくことが大切なんですね。

小原綾斗(Tempalay)-がんばれー

自分個人のアーティスト心理としては、どんな条件や環境であろうが自ら選んできたし、表現のかたちは変われど精神的なところでは同じ感覚で創作活動ができていると思います。
問題はそれを発進する会社、メディア、日本の音楽業界全般における順応の遅さにあると思います。がんばれー

ライブロックバンドTempalay、やっぱり、アーティストは自らの創作活動に専念することが大事。問題は音楽業界の方にあると。
確かにそうですね。サブスクはみんな海外からの輸入品。日本企業のサブスクっていうとLINEミュージックくらいですが、Appleミュージックとかと比べると劣ります。結局、そういうところがアルバム録って配給して、ツアーしてっていうスタンダードが何十年も変わらない。それはそれで良さがあるんでしょうけど、アーティスト、リスナーの変化にその間をつなぐ存在がついていけてないというのが問題ですよね。

君島大空-柔らかい素材でできた釘が創りたい

音楽が時間の中を流れていく速度が早いなと思います、きっとそれは聴環境によるものと、この国だからこその体感なのかなと思うことがあり、面白さも歯がゆさも同時に感じています。固着した観念が未だ足音を掴んでいるような気もしますし、踝に小さな羽が生えてきたような気もします。自分としては昔からの現状を把握することや、流れ、のようなものを捉えることに疎いので、まずいつも自分にとって、できるだけ柔らかい素材でできた釘のようなものが創れたら良いなと思っています。

2019年3月13日にEPでデビューされたばかりの君島大空。初めて聴きました。柔らかくて、温かくて、サイケデリックで、面白い歌を歌いますね。要チェックです。
音楽が流れていく速度が早いのは本当にその通りですね。半年リリースもイベントもしていなければ忘れられるような時代です。リスナーとしても、深く音楽を聴き込むというよりも、Spotifyが勝手に作った好みのプレイリストをザーッと鳴らしているだけ、のような状態が広がっています。
彼のいう「固着した観念」はCDとか旧メディアでしょうか。確かに、自分もプレイリストを漫然と聴いていて、さっき聴いていた曲のタイトルも忘れていることがあります。
そんな時代に「できるだけ柔らかい素材でできた釘」を創るというのはいい表現ですね。何かを強制したり、押し付けたりするのではなく、自由、個人の価値観を尊重した柔らかいもの、それいてしっかりと刺さる。自由や多様化が言われる中、この表現はすごくいいです。

n-buna(ヨルシカ)-音楽の価値はなにも変わらない

CDが売れなくなっただの、サブスクの時代が来ただのいろいろ話は聞きますが、結局どんなリスニング形態になっても音楽は音楽です。レコードであろうが、ラジオであろうが、スマートフォンのスピーカーからであろうが、流れる音楽の価値は、音質以外は変わらない。
僕は自分のために音楽を作っているので、そこがどう変わっていこうか特に文句もないです。我々クリエイター側に大事なことはどう聴かれるかじゃなくて、何を作りたいかだと思ってます。

元々はボカロプロデューサーとしていろんな名曲を創り、今はヨルシカのギター、作曲家として活動するn-buna。サブスクが登場する前から、ニコニコ動画やYouTubeに無料で音楽を上げてきました。彼からしたら、CDにする方が違和感なのかもしれません。結局、スマートフォンのスピーカーから聴かれるならYouTubeやニコ動で十分。確かにその通りかもしれませんね。
こうしたテーマのインタビューがアーティストに行われること自体、本当は変なことなのかもしれません。アーティストはあくまでも表現者、それをどう消費するかはリスナーに委ねられています。まあそれは綺麗ごとで、多くのアーティストはできるだけいい音質で、スマホのスピーカーじゃなくてイヤフォン、イヤフォンじゃなくてヘッドフォン、ヘッドフォンじゃなくてライブハウスのスピーカーから出る爆音で聴いて欲しいと思っていると思いますが。
でも一周回って、「創りたい物を創るだけ」という純粋なアーティスト精神が、次世代の表現者なのかもしれませんね。音楽の価値が下がったっていうけど、それは商売的な話であって価値は変わってないでしょ、って、その通りなんですけど、なかなかそう言える人も少ないでしょうね。

三原健司(フレデリック)-聴く側としてありがたい

SNSの普及により受け取るコンテンツの増加、サブスクリプション増加に伴うCDの必要性の有無、聴く側にいい環境が整う反面、発信側が抱える不安は大きくなっているのが現状ですよね。
ただ聴く側としてすごく有り難いのが、どうしても見つける事ができなかったCD、レコードに入っている60年、70年の音楽まですぐに見つける環境が当たり前に手に入っていることは制作上すごい有り難いことですよね。確実に今後の音楽へのインプットに貢献していると感じます。
現状、面白いと考えつつも受け取った人の手触り感にこだわっていて、自身のCDは紙ジャケットにしているバンドなので、今後の変化について考えていく次第であります。

フレデリックも気づけば10年。CDリリースが当たり前だった時代から、まさにサブスクに切り替わっていく中で売れてきたバンドです。
三原さんのいう「発信側の不安」というのは、収益性の部分と、作品としての価値の2つの不安があると思います。収益性に関してはやっぱりCD売るよりは儲かりにくい。1回再生されても収益は1円未満。10曲のアルバムを10回聴かれても100円にもなりません。サブスクで100万円稼ごうと思ったら、100万回くらい再生されないといけない。ミリオンヒットで100万円です。それと、すでに言いましたけど、プレイリストによるつまみ食い嗜好というか、音楽がBGMになってしまっている状況。昔なら音楽ファンはCDが並んだ本棚に向かって、「今日は何聴こうかなー」とある程度真剣に考え、CDデッキに入れ、ある程度真剣に聴いていたわけです。そう考えるとサブスクで音楽の価値が下がったといえなくないかもしれません。
ただやっぱりサブスクのおかげ、という面もあって、古い音楽とすぐに出会えることは大きな魅力ですね。Queenの映画「ボヘミアンラプソディー」を観たあと、すぐにアマゾンミュージックでQueenの曲を100曲以上落としました。こうしたことはサブスクだからできることでもあります。

谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)-曲を大事にしてあげてください

谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)-曲を大事にしてあげてください

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興味を持った音楽を自由に聴けるようになっているのはとってもいいことだと思います。コンサート、ライブ、フェスティバルに足を運んで下さる人々がより一層増えることを願うばかりです。そして、何より好きになった楽曲があったら繰り返し聴いてその曲を大事にしてあげてください。それが、音楽家として望むことです。

いろんなアーティストとコラボし、結成30年以上にしてまたブレイクしているスカパラ、そのMC担当であり、稀代の音楽家フランク・ザッパの崇拝者である谷中さん。
スカパラは本当にライブが楽しい。一度しかライブに行ったことないんですけど、本当に楽しかった。でもそれってサブスクでスカパラの曲聴いていたことがきっかけなんですよね。そう考えると、サブスクで知ってライブでさらに好きになる。この流れがちゃんとある。
一昔前はフェスとかでライブ見て、好きになったらCDを買うっていうのが一般的。でも今はサブスクで知って、ライブに行く流れが一般的。そうなるとライブの重要性が上がっていて、音源に求められるものが変わってきている。

宮崎朝子(SHISHAMO)-好きな音楽を好きに切り取って好きに持ち歩く

「”CD”で曲を聴いてほしい」と思って曲を作ったことはないので、どんな形でも聴いてもらえたらすごく嬉しいし、むしろ今はその手段がすごく増えたので、私は嬉しいです。
それでもまだCDという形で曲を売っているのはただ作りたくて作っているだけなので、こちらの勝手という感じです。好きな音楽を好きに切り取って好きに持ち歩いたらいいと思います。

いいですね。「好きな音楽を好きに切り取って好きに持ち歩く」という表現。確かにそんな風に音楽を楽しむようになった気がします。「今日はどこどこへ出かけるから何々を聴こう」みたいに。
やっぱり自分がCD好きだし、自分自身の作品を目に見える形で持ちたい。CDをリリースすることに関しては同じ感覚のアーティストは多いと思います。

アマダシンスケ(FOMARE)-ライブを魅力的に感じさせる

いろんな変化があったと思いますが、あまり意識はしてなかったです。音楽ファンとして自分は今の環境に物凄く助けられています。気軽に好きなバンドの音楽を聴けるからです。物凄く面白い時代だなあと思います。発信側としてはライブに来て欲しい、それだけですね笑。いろんな環境の変化がある中でライブをどう魅力的に感じさせるかを大切にしたいです。

スカパラの谷中さんと近い意見かもしれないですね。発信側は形は変わっても結局多くの人に聴かれるチャンスは変わらない。消費スピードが速い、音楽だけで差別化が難しいからこそ、ライブでの魅力を大切にしたい。その通りですね。ボカロが一気に出てきていた時はライブの価値が下がっていくのかなと思ってましたけど、今は逆にライブの重要性が上がっています。音源というリピート可能なものではなく、ライブという再現不可能なものに価値が集まってきているんですね。

リスナーは安心してサブスク使って、アーティストはライブを頑張ろう

MUSICAではこの他にも数人、全部で23人のアーティストが同じ質問に答えているんですけど、まあ共通して言えるのは、サブスクに困っているアーティストはそんなにいないということです。サブスクでアーティストが売れないとか話題になったこともありますけど、全然そんなことはない。
むしろアーティストはこれまで届けられなかった層にも音楽を届けることができるようになっています。シングルCDを買ってもらうって、かなり難しいことです。1500円、決して安くない。相当頑張らないと買ってもらえません。それが月額数百円で、実質ただのような気分で気軽に聴いてもらえます。
この変化を多くのアーティストはピンチではなくチャンスと考えているようですね。リスナーが払うお金とか、聴き方が変わっても、結局は作品次第。音楽は変わっていない。

そしてより重要性を高めているのがライブです。昔のレコードなんかは、賞味期限があったわけです。何百回も聴いてると擦り切れて聴けなくなってしまう。それがデジタルデータだと無限に聴けます。そういうものにお金を払う感覚が減っていくことは当然。
だったら再現不可能、同じものはどうやっても見れない「ライブ」にお金を払うようになっています。

まあ、結論。リスナーの中には違法ダウンロードとかのイメージがあったり、音楽を安く消費している感覚になったりしてサブスクは使わない方がいいと考えている人もいますけど、気にする必要なし。サブスクで好きに音楽を消費して、飾りたくなったらCDを買えばいい。
アーティストはサブスクやYouTubeでどんどん音楽を出して、それ以上の魅力をライブで出せばOK。

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