こんにちは、HORNnet編集部です。
今回は、以前書いた「初心者がDTM始めるにあたって必要な機材part1」という記事の続きになります。
DTMいいですよね。僕も個人的にちょっとチャレンジしたり、色んな雑誌を読んだりしているんですが、面白いです。果てしなく奥が深いのに、意外と簡単に始められる。
DTMやってるアーティストのインタビューとか聞くと面白いですよ。最近読んだのでいうと「サウンドデザイナー」というギタリストのためのレコーディングマガジンに載っていたUVERworldのインタビューです。あんまり知らなかったんですけど、彼らはプライベートスタジオを持っていて、自分たちで曲を作り込んでいくみたいです。
10年、20年後にはそこら中にセミパブリックスタジオみたいなものができて、誰でも自由に音楽制作できるようになってるかもしれませんね。
では、前回の続き。初心者がDTM始めるにあたって必要な機材Part2です。
DTMに必要な機材
前回はそこそこのスペックのPC、DAWソフト、モニタースピーカー、ヘッドフォン、オーディオインターフェースを紹介しました。まあここまでで十分DTMを始める環境は揃ってると言えるんですが、ここからはあったら便利なもの、本格的にやるなら持っておきたいものとして、MIDIキーボード、マイク、楽器類などを紹介していきます。
あったら便利MIDIキーボード

Hecatoncheir sistersヤスイが所有しているMIDIキーボード「AKAI Professional MPK mini」
MIDIキーボードと言ってますが、MIDIパッド、MIDIコントローラーとも言います。まあMIDIコントローラーという言い方が一番正確。なにをするものかというと、ドラムの打ち込みとか、色んな楽器を録音するのに使います。
MIDIは「Musical Instrument Digital Interface」の略で、まあ演奏情報などを送受信するためのデータ規格なんですけど、あんまり気にせず、DAWソフトを操作したり、擬似的に楽器を演奏したりするものと思ってもらって大丈夫です。
例えば、ドラムの譜面を見たことがある人はわかると思うんですけど、バスドラム、スネア、ハイハット(オープン/クローズ)、ハイタム、ロータム、フロアタム、チャイナシンバル、クラッシュシンバル、ライドシンバルと、まあ色んな楽器を組み合わせてビートを作っています。
DTMではこうした作業をDAWソフトを使って、クリックで一個一個打ち込んでいくんですね。1拍目にバスドラムとハイハット、1拍目の裏はハイハットだけ、2拍目はスネアとハイハット、2泊目の裏はハイハットだけ、3泊目の表と裏にバスドラとハイハット…といった具合です。
まあ気が遠くなる作業です。かといって電子ドラムを買って自分で叩こう!ともなかなかいきません。
そこで登場するのがMIDIコントローラーです。MIDIキーボードのパッド部分にドラムのスネアとかハイハットとかを登録して、自分の指でビートを刻む。まあこれも簡単ではないですけど、電子ドラム買って練習したり、一個一個マウスで置いていくよりは圧倒的に簡単。
この動画の中でコバソロさんが指でトントンやってるやつもMIDIコントローラーですね。いやあ素敵。コバソロもヨルシカもいつか紹介したいですね。
こんなのも見つけました。いわゆる「神技指ドラムパフォーマンス」というやつです。ハンパない、というか訳がわからないですよね。まあ各パッドにそれぞれ音を登録していて、指で叩いているだけなんですが。
普通、ドラムって脚2本、腕2本でパフォーマンスします。つまり同時に鳴らせる音は最大4つ。でも、MIDIコントローラーの場合、指10本を使います。なんとなく不自由そうな印象がありますけど、かなり自由度の高い楽器なんですよ。
- 作曲が効率的になる
- 指で打ち込むのでマウス操作より音楽的になる
- 実際の楽器に近い感覚で作曲できる
- ライブでも活躍!
MIDIコントローラーを持つメリットをあげるとこんな感じ。作業が効率的になるというのは既に紹介した通り、ドラムが叩けなくてもドラムを打ち込めるし、ギターやベース、キーボード、シンセサイザーを持ってなくても打ち込める。
あと意外と重要なことなんですけど、マウス操作で打ち込んでいくと頭の中で考えたフレーズをクリック通りに打ち込んでしまいます。でも実際、それって音楽的じゃないんですね。人工的というか。ある程度のリズムのよれとか、その場のノリで生まれたフィルがいわゆる”音楽的”というニュアンスにつながるんですね。
MIDIコントローラーは指で実際に弾くので、そういうニュアンスが出やすい。実際の楽器に近い感覚で作曲できるというのも同じことですが、過去に少しでも楽器を触ったことがあるなら、MIDIにもすぐ慣れます。
最近はライブに取り入れるアーティストも多いですね。
あとはどんなMIDIコントローラーを買うか。これが一番難しいところです。
一言にMIDIキーボードと言っても、MIDIキーボードと呼ばれるもの、MIDIパッドと呼ばれるもの、いろいろあります。まあ目的によって良し悪しは様々なんですが、今回は「初心者がDTMを始める」というところで考えて、1〜3万円くらいのDTM向けのものを紹介します。
もしライブで使う場合は適さないかもしれないのでご注意を。
超初心者向け、DTM定番の「KORG nanoPAD2」
まず、初めてDTMに取り組む、よくわからないけどとりあえずMIDIコントローラーは持っておいた方が良さそう、というのであれば「KORG nanoPAD2」一択です。
シンセサイザーやキーボードの分野では世界的メーカー「KORG」の製品なので品質はバッチリ。16パッドついてますが、「神技指ドラムパフォーマンス」を目指すわけでもなければ十分すぎる数。それで4,000円前後。
一番いいところはシンプルなところですね。色んなスイッチとかノブがついてても8割方使いません。約束します。高機能なMIDIコントローラー買っても、8割方使いません。KORG nanoPAD2は16個のパッドと、ピッチなどを調整するディスプレイみたいなパッドが一つ。
KORGは同じシリーズで、「nanoKEY2」「nanoKONTROL2」があります。nanoPAD2がドラムの打ち込みに最適化されているとすれば、「nanoKEY2」は音階がはっきりした楽器、ベースとかストリングス系、ピアノの打ち込みに最適化されています。「nanoKONTROL2」はDAWソフトを操作するものです。これもDTMやっていく中では便利なので、あってもいいかもしれませんね。
サイズもちっちゃいですし、ノートPCの前に3つ並べてもあんまり邪魔にならなさそう。3つ揃えて、ほとんどマウス使わずに音楽制作ができる、とか超かっこいいですね。
KORG nanoPAD2
KORG nanoKEY2
KORG nanoKONTROL2
コスパ最高のマルチMIDI「AKAI Professional MPK mini」
HORNnet編集部の一人でもあるHecatoncheir sistertsのギター、ヤスイユウヤも所有しているコスパのいいオールインワンモデル。見ての通り、先ほど紹介したKORGのnanoシリーズと違ってキーボードとパッド、色んなつまみが一つのボディに収まっています。これでお値段1万円未満。コスパいいですね。エディターが使いにくいとか、色んな意見もあるみたいですが、まあ普通に使いやすそうです。
こちらも色んな人の実演、解説動画が多くあります。
もう少し高機能なMIDIコントローラーが欲しいと思ったら「ARTURIA KeyLab MKII」
世の中には星の数ほどMIDIコントローラーがありますが、紹介しすぎても意味がないのでこれで最後。「ARTURIA KeyLab MKII」です。
ARTURIA社はMIDIコントローラーだけでなく、DTMやライブに役立つ色んな製品を出している信用あるメーカーです。
この紹介動画みてたら欲しくなってきました。DAWとの連携方法から、KeyLab MKIIを使ったパッドの打ち込みまで、詳しく説明してくれています。すごいですね。いろんなDAWソフトと連携する機能があるだけでなく、キーボード、パッドの数、コントローラーも十分に備わっています。
これだけいろいろあると使いこなすにはちょっと知識というか、慣れが必要だと思いますが、いつか手に入れたい逸品です。
MIDIコントローラーは本当に色んな種類があるので、ぜひ買う前にいろいろ調べて、実際楽器屋に行って触ったり、店員さんに話を聞いてみたりしてみてください。MIDIコントローラーを手に入れて無料のDAWソフト(GarageBandとか)につなぐだけで、「うおっ、俺DTMやってる!」ってなります。
今回紹介したのは1万円未満からせいぜい3万円で購入できるものです。でも、ギターなどの楽器のようにMIDIコントローラー自体に音質がいい、悪いとかがあるわけではないので、使いこなせば十分プロレベルの音源を作る上で活躍してくれます。
歌も録るならコンデンサーマイク
ここからはプラスα、というか必要な人は手に入れましょうという話。まずはマイクです。DTMで歌録りまでするなら絶対必要ですね。ボカロとか、バックミュージック、インストをやる場合は必要ありません。
まず、DTMをやる上で必要なマイクはライブで使うマイクとは違う、ということを知っておく必要があります。なので、ライブで使う「ダイナミックマイク」とレコーディングやDTMで使う「コンデンサーマイク」の違いについて簡単に紹介します。
まあ細かな違いとかを理解する必要は全くないんですが、DTMに必要なのはコンデンサーマイク、と覚えておきましょう。

ライブなどでよく利用されるダイナミックマイク 。感度が低い代わりに丈夫で電源が不要
こちら、ライブでよくする一般的なマイクですね。こういうマイクを「ダイナミックマイク 」と言います。振動や湿気に強いのでライブではよく使われるんですが、感度は低め。

レコーディングでよく利用されるコンデンサーマイク。感度が高い代わりに湿度や振動に弱い。
そしてこちらが、音楽をやっていないとなかなか直接目にすることはない「コンデンサーマイク」です。非常に敏感で細かな息遣いまで拾います。ほんと凄くて、離れたところにいても息遣いとか服がわずかに擦れる音とかまで拾います。ただその代わり振動や湿気に弱いため、ライブでは滅多に使われません。レコーディングやDTM用ですね。湿気に弱いので唾が入らないように手前にカバーみたいなやつが被せられています。
ダイナミックマイクは数万円で十分いいのがあるんですが、コンデンサーマイクは非常に高価。もちろん1万円台からあるんですが、レコーディングスタジオに置いてあるやつは大体20万円から40万円くらい。プロのレコーディングになると100万円を超える物も普通にあるとか。
何がそんなに違うのって、レコーディングエンジニアをしている友人に言わせると、ミックス段階でのやり易さが全然違うんだとか。
まあその辺はおいておいて、DTMやるならできればコンデンサーマイクが欲しいということです。ダイナミックマイクはでかい声で歌わないと十分に拾わない上、繊細なニュアンスが表現できません。
安物でもいいからコンデンサーマイクを買う。これからDTMを始める人は覚えておいてください。
オススメのマイクとか紹介してもいいんですけど、僕が詳しくないのでそれは控えます。ただ、コンデンサーマイクが必要らしいのでいろいろ調べてみてください。
楽器はあると何かと便利

Hecatoncheir sistersギター ヤスイユウヤの個人機材。エレキとアコギが一本ずつ。
MIDIコントローラーがあれば楽器は必要ないと思うかもしれませんけど、弾けるなら楽器は持っておいた方がいいです。そこそこドラム叩けて、自宅にいい電子ドラムがあるなら、MIDI使わずに叩いた方が早いですし、なにより音楽的です。
それはギターとかベースなど、全楽器に対して言えます。MIDIコントローラーはあくまでも本物の楽器の変わりと考えた方がいいと思います。MIDIでギターのニュアンスを再現することもできなくはないと思いますが、弾けるならギター弾いた方が早い。
ということで楽器弾ける人は楽器を使いましょう。弾けない人は楽器を練習するよりはMIDIコントローラーを極めた方がいいと思いますが。
はい次。もうDTMに必要なものは大体揃いました。しかし最後、これを揃えるかで実際にDTMやれるかが決まると言ってもいいものがあります。
とりあえず本か雑誌を5冊くらい買おう
DTMって始めた人の3〜5割くらいは1曲も作らずに辞めちゃうそうなんです。理由は簡単、ちゃんと勉強しないから。今時パソコンは誰でもそこそこいいもの持ってるし、オーディオ好きならモニタースピーカー代わりに使えるスピーカーとかヘッドフォンを持ってると思います。となると、1万円くらいのオーディオインターフェース、1万円くらいのMIDIコントローラー、あとはGarageBandを起動すればDTMに取り組めちゃうわけです。
とはいっても、DTMって簡単じゃないです。ほんと、MIDIコントローラーを使いこなすだけでも一苦労。DAWなんてさらに機能が多いので、とても使いこなせません。最近はYouTubeで曲作りの方法とか、DTMの方法を紹介してる動画もいっぱいありますけど、やっぱりああいうものって説明不足なものが多い。YouTube動画見て「お、俺もこんなのできたらかっこいいんじゃね」という気持ちで始めてとりあえずMIDIコントローラー買っても、まず同じようにはできません。
楽器だけじゃなくて、新しいことを始めるときってある程度勉強するじゃないですか。ギター始めるってなったら、いきなり数万円のギター買いに行くんじゃなくて、ギターやってる友達に弾かせてもらうとか、ギタープレイヤー向けの本何冊か買って見るとか、そういうことしますよね。
それとおんなじことをDTMでもやりましょうということです。気軽な気持ちで始められますけど、決してDTMは簡単じゃない。
ということで、YouTube動画見て「お、俺もこんなのできたらかっこいいんじゃね」と思ったらとりあえず本5冊くらい買って読みましょう。Part1からいろいろ紹介してきましたけど、まず買うべきものはDTM関係の本や雑誌です。
僕が個人的にお勧めするものを簡単に紹介しますが、ほんと、本買って勉強するかどうかでDTMライフが大きく変わりますから、心して聞いてください。
サウンド&レコーディングマガジン
まあ、これ買って中身を全部理解できたら他の本は買う必要ありません。プロでも愛読している人がいるくらい専門性の高い月刊紙です。DTMはもちろん、MIDI、エフェクター、PAなど音楽に関わる人なら是非読んでおきたい雑誌。
上級者向けなので、「DAWって何?」レベルの人はまだ読まないように。読んだだけで挫折しそうなくらい専門用語と意味不明なこだわりに満ち溢れた雑誌です。
サウンド・デザイナー
初心者から中級者向けの音楽雑誌。ちょうどこれを書いているタイミングの2020年2月号では音楽初心者向けのDAWをテーマにした特集が組まれていました。無料で使えるDAWをソフトを使ってまずは一曲作ってみようみたいなコンセプトなので、まさにこの記事を読んでいるあなたにぴったりなんじゃないかなと。しかも特集の中ではYouTube配信を行う方法まで解説しているという、非常に現代的な雑誌です。
サウンド&レコーディングマガジンはちょっと難しいなーという人はぜひサウンド・デザイナーを買ってみてください。
作りながら覚える 3日で作曲入門
DTMにおいて、最初のハードルがDAWとかMIDIの使い方です。で、次のハードルが曲作り、作詞作曲です。これはもう、転生のセンスがないと無理なんじゃないかと思いますが、案外ロジカルな作業です。基本的なコード進行とか、曲の展開とか、大体のことは音楽理論としてまとまっています。
世の中には「音楽を理論で語るんじゃねえ」みたいな硬派ロケンローどもが一定数いるんですが、気にしないでください。音楽は理論、ロジックです。決められた12個の音階を軸にどう組み合わせていくか、化学、物理の分野と言っていいくらい、論理的な作業です。
つまり論理を学べばセンスがなくてもいい曲が作れるということ。この本は音楽理論というほど堅苦しくないですが、ドラム、ベースを作って、ピアノ、メロディを作って〜と曲を土台から作っていく方法を紹介してくれています。この本のいう通りにやっていたらとりあえず一曲できることは間違いない。それで自信とか感覚を身につけて、よりオリジナリティのある音楽制作に取り組んでください。
ドラム・パターン大事典326 全フレーズ映像対応!
これは個人的な感覚なのかもしれませんが、DTM初心者が一番つまづくところってドラムだと思います。ボーカルはもちろん、ギターとかベースってある程度聴いてたらイメージできるじゃないですか。だからある程度DTMでも作りやすい。でもドラムって、どのタイミングでバスドラム鳴らしてるとか、あんまり意識して聴いたことないんですよね。その状態でDTMを始めて、MIDIコントローラーでドラム打ち込んでも、すぐネタ切れになる。ドラムとハイハットでいい感じのリズムができても、シンバルとかハイハットとか、タムとかをどう組み合わせたらいいグルーブ感というか、いいリズムになるのかわからない。
そんなとき役立つのが「ドラム・パターン大事典326 全フレーズ映像対応!」です。8、16、4、2それぞれの基本ビートから、ロック系、メタル系、3連符、変則ビートなどなど。さらにファンク系、ディスコ系、R&B系、ブルーズ系といろんなジャンルにおけるリズムパターンを全部で326も入ってます。
まあこれ買って、いろいろ組み合わせるだけでしばらくドラムパターンのネタには困らないでしょう。
気軽な気持ちでDTM始めましょうや
さて、今回も意外と長く紹介してきました。前回から続けて「初心者がDTMを始めるために必要なもの」というテーマですが、書いて実感しました。あんまり機材は重要じゃない。それよりも、本の紹介で伝えたように、ちゃんと音楽を楽しむために勉強することの方がよっぽど大事。
もちろん、形から入るタイプとか、でっかく投資しないとやる気出ないとかあると思いますけど、ツールの良し悪しはまあ誤差です。無料ツールでも十分いろんなことができますし。
とりあえず、Part1から読んでる人も、「おっしゃ、モニタースピーカー買うか!」「無料のDAWインストールしてみよう」とかいう前に、何冊か本買ったり、ちゃんと解説してくれている動画を見たりして、ちょっと勉強してみてください。
DTMって思ったより華やかでも、楽しくもないです。地味で淡々としていて、バカみたいに時間かけてできたものは人に聞かせられるレベルじゃない…っていうのを何度も繰り返して、ようやく楽しくなってくるものです。
それでは、この記事があなたの音楽ライフ、DTMライフの何かしらのきっかけになって、より音楽の楽しさとか、深さとか広さを味わってもらうことを期待しています