こんにちは、HORNnet編集部です。
今日はバンドマン、アーティスト向けの記事です。
最近は「デジタルリリース」という言葉も誕生するくらい、音楽サブスクが人気ですね。
「デジタルリリース」というのは、CDを作らず、SpotifyやAppleMusicなどの音楽サブスクでのみリリースすることです。CD好きにとってはちょっと悲しいですが、CDを作って流通させるコストもかからないですし、聴く人もCDが好きとはいいつつ、サブスクも使っていたりするので、今後はデジタルリリースが定番になるのかもしれません。
最近、「LP盤(レコード)」のリリースも流行っていますが、CDもそういう風にCDをリリースすること自体が特別なことになっていくのかもしれませんね。
CDを作らないデジタルリリースは、CD製造のコストが重いインディーズバンドこそ活用したいですよね。
とはいえ、問題になるのはデジタルリリースした曲をどうやって聞いてもらうか。
CDだったら1枚売れたら1000円〜2000円になりますが、Spotifyで1000円稼ごうと思うと1000回くらい聞いてもらわないといけません。
CDを1枚売るか、Spotifyで1000回聞いてもらうか。どちらが難しいという話ではないですが、インディーズバンドにとってはCD売る方が簡単かもしれません。
それに、CDであれば、ライブハウスで売ったり、タワレコに置いてもらったり、知り合いの服屋さんや美容室に置いてもらったり、結構色んな方法で売っていくことができますが、Spotifyで曲をプロモーションする方法ってあんまりないですよね。
そこで活用したいのが「サブミット」と呼ばれるサービス。
うまく使えばデジタルリリースをきっかけに多くの人に音楽を届けられるかもしれません。
音楽のサブミットとは
「サブミット」とは、「Submit=参加する、提案する」という意味なのですが、簡単に言うと「この曲を紹介して!」と、Spotifyでプレイリストを作っている人やユーチューバー、ブロガーさんに依頼するためのサービスです。
ビジネスモデルとしては特に新しいものではなく、企業が行うプレスリリースや最近話題のインフルエンサーマーケティングと同じような感じです。
依頼する側は少しの費用(無料で依頼できることもある)で、知名度・影響力のある人に取り上げてもらい、多くの人に曲を届けることができます。
依頼を受ける側は、依頼費用がもらえるうえ、自分のメディアに良いコンテンツを載せることができるので、Win-Winの関係ですね。
こうした依頼を受けてくれるメディアのことを「サブミッションメディア」と言ったりします。
キュレーターと言ったりすることもありますが、呼び方は正直なんでも良いと思います。
以前はプレスリリースサービスを使ってニュースメディアなどに依頼したり、ラジオ番組にメールで「取り上げてください!」って送ったりしていたのが、Spotifyでプレイリストを作っている人や再生リストや音楽のまとめ動画を作っているユーチューバーに変わっただけ、と考えた方がわかりやすいですね。
サブミットで得られる効果
サブミットで得られる効果はなんといってもこれまで届けられなかった人に曲を届けることができる点です。
例えば、2010年代のロックミュージックを中心にプレイリストを作っている人に取り上げてもらえたら、2010年代のロックミュージックが好きな人に聞いてもらえる可能性がありますよね。
リスナーにとっても、プレイリストは新しい曲と出会える場所です。最近はTikTokなどSNSでバズるか、公式・有名プレイリストに取り上げられるか、だいたいどちらかから新しいヒットソングが生まれていますよね。
サブミットを使うということは、こうしたヒットの法則に則って曲を届けられるわけです。
費用もほとんどかからないプロモーション方法なので、使わない手はないですね。
一つ注意すべきことは、サブミットとはあくまでも提案、つまりお願いです。なので、依頼したからといって必ず取り上げられるわけではありません。有料のサービスの中には最低何人に取り上げてもらう、など成果保証型のものもあります。
が、基本的にはサブミッションメディアも、自分が良いと思った音楽を紹介しているので、100%取り上げてもらえるサブミッションメディアは広告100%、信用しない方が良いかもしれません。
代表的なサブミットサービス
ということで具体的なサブミットサービスを紹介していきましょう。
〇〇 for Artists
いちばん重要なサブミットサービスですが、〇〇でまとめてしまいました(笑)。Spotify for ArtistsやApple Music for Artistsなど、サブスクサービスやSNS自体がやっているサブミットサービスですね。
ここで取り上げられるということは、公式プレイリストに取り上げてもらえる、ということなので条件が揃えば利用しない手はありません。
そもそも〇〇 for Artistsはサブミットのためではなく、曲がどこでどれくらい聞かれているかなどを解析したりするサービスなので、サブスク配信するならどれも使いこなしておきたいですね。
デジタルリリースを行う時、Tunecoreなど一括して登録するサービスを利用しているバンドが多いと思いますが、その場合でも各サービスのアカウントを作って活用した方が良いでしょう。
Tunecoreなどの一括登録サービスは最大公約数的な機能しか使えませんが、各サービスにログインして、Tunecoreで配信している曲と連携させておけば、機能をフルに活用できます。
代表的な〇〇 for Artistsには下記があります。他に注力しているサブスクサービスがあれば、それもチェックしてみてください。
▶Spotify for Artists https://artists.spotify.com/
▶Apple Music for Artists https://artists.apple.com/ja-jp
▶Amazon Music for Artists https://artists.amazonmusic.com/ja/
▶TikTok for Artists https://artists.tiktok.com/spotlight/jp
これらのサービスはまだ発展途上のようで、現状サブミットとして使えるのはSpotify for ArtistsとTikTok for Artistsです。
なお、Spotify for Artistsでサブミットを依頼する場合はデジタルリリースする前に申し込まないといけないので注意が必要です。
Tunecore Submit
https://www.tunecore.co.jp/submit
Tunecoreが提供しているサブミットサービスです。
リリース資料をアップロードすれば、Tunecoreが提携しているいろいろなメディアにリリース資料が送られ、取り上げられてもらえる可能性があります。まさにプレスリリース的なサービスですね。
Tunecoreのサイトには次のようにあります。
新譜リリースをサブミットすることで、バナー・ピックアップ欄・プレイリストなど、配信ストア上であなたの楽曲が展開・紹介がされやすくなる場合があります。リリースする作品・アーティストの活動内容について、できるだけ多くの情報をサブミットしましょう。
Tunecore Submitの利用そのものに費用はかからない(リリース自体の手数料のみ)ので、Tunecoreでデジタルリリースするなら使わない手はありませんが、リリースする2週間以上前に申し込む必要があります。一刻も早く聞いてほしい!という時には使えないのが痛いですね。
SubmitHub

海外向けにも聞いてほしいならぜひ使いたいのがSubmitHubです。その名の通り、いろいろなサブミッションメディアのハブ(集約させてつなげる)となるサービスです。
アカウントを作り、キュレーターと呼ばれるサブミッションメディアの運営者に依頼するのですが、こちらは有料のサービスです。
クレジットと呼ばれる依頼チケットを購入し、その依頼チケットで自分の曲と相性が良いキュレーターに依頼を行います。クレジットの価格は5クレジットで6ドル。大量に購入すればその分安く購入できます。
殆どのクリエイターは1〜2クレジットで依頼できます。
海外のキュレーターばかりなので、日本語の歌だと相性が良くないかもしれません。しかし、サブミットは日本より海外の方が盛んなので、海外の人に聞いてほしい時はオススメです。
有料なので他のものよりハードルが高く感じるかもしれませんが、その分しっかりレスポンスがもらえ、取り上げてもらえる確率も高いのが特徴です。
また、キュレーターを得意なジャンルや品質、返答率などで検索、並び替えできるので、良いキュレーターを見つけやすいことも魅力。
TOWER DOORS


時代は変わってもタワーレコードはリスナーにとっては遊園地、インディーズバンドにとっては一つの目標でしょう。そんなタワーレコードに取り上げてもらえる可能性のあるサービスがTOWER DOORSです。
しかし正直なところ、効果はそこまで期待できないかもしれません。
というのも、TOWER DOORSでは依頼した楽曲に写真を合わせてタワーレコードのYouTubeチャンネルにアップロードされるのですが、再生回数が1万回を超えるものはほとんどありません。だいたいの動画が数百回程度の再生回数です。
比較的新しいサービスなので、今後タワーレコードがどこまでこのサービスに力を入れていくかが課題でしょう。
とはいえ、インディーズバンドによっては貴重なプロモーション機会。フォームを送るだけなので、ぜひやってみてください。
HIGH QUALITY CURATION MEDIA “TOWER DOORS” は、「タワーレコードが厳選したハイクオリティーなニューカマーの楽曲が聴ける、ラジオ型YouTubeチャンネル 」毎週3~4曲更新し、あなたに新たな音楽を紹介します。
〈TOWER DOORS RADIO〉という新人アーティストを紹介し解説するポッドキャストコンテンツも配信中。 TOWER DOORSは、TOWER RECORDS独自の目利きで選曲し、リスナーには「新たな音楽との出会い」を、アーティストには「音楽を知ってもらう機会」を提供するメディアです。ぜひここで皆さんの様々な音楽の“扉”を開いてください。
Pluto
毎週水曜日にSpotifyでプレイリストを公開しているPlutoにサブミットすることができます。
プレイリストによっては数万フォロワーがいるものもあります。Spotifyでの再生数を伸ばすなら利用したいですね。こちらも無料で依頼できます。
【🎸アーティストの方へ🎸】
プレイリスト制作チームPlutoでは、楽曲の提案を受け付けています🎹 このページからプレイリストへの楽曲提出が可能です。https://t.co/UmBpuTTYb6
※提出にはSpotifyアカウントが必要ですぜひプロモーションにご利用ください🎷🎺
— Pluto #playlist (@Pluto_playlist) October 25, 2019
依頼を受けてプレイリストを作っているのではなく、基本的にはPlutoのスタッフが良いと思った曲をまとめているので、有名なアーティストの曲も入っています。自分の曲が米津玄師やYOASOBI、星野源などと一緒のプレイリストに載ると嬉しいですね。
ついにPlutoのプレイリストの合計フォロワーが10万人を突破しました!🎉🎉🎉😭
Spotifyで地道にプレイリストをつくり続けて約2年半…諦めずに続けてきて良かったです。 pic.twitter.com/54DZaDDlcD
— Pluto #playlist (@Pluto_playlist) February 19, 2021
プレイリストの合計フォロワー数は10万人。後4万人で日本1位のプレイリストになるそうです。
ちなみに1位はONE OK ROCK、3位はサザンオールスターズ、4位はback numberだそうです。
Ano(t)raks
2012年から運営されているネットレーベルAno(t)raksが運営するサブミッションメディア。
ラジオのようにYouTubeライブで音楽を流しているようです。
インターネット内に埋もれている、次の時代を担う可能性を秘めたアーティストを発掘し紹介するために、2012年6月に個人運営のネットレーベルとしてスタートしました。
リリース作品はスタート当初から国内より海外での支持が厚く、2014年にはpitchforkにて紹介されました。また、リリースアーティストからは幾つかのメジャーアーティストを輩出しています。2019年には企業の一部署として法人化し、次世代レーベルを目指し新たなスタートを切りました。
Ano(t)raksさんの投稿 2021年1月21日木曜日
銭湯とコラボした音楽配信を行っていたり、いろいろな活動をしているようなので、取り上げられることでこれまで音楽を届けられなかった人に音楽を届けられるかもしれませんね。
Spotifyのプレイリストも用意されているので、デジタルリリースのプロモーションにもぴったりです。
lute selection
音楽動画メディア「lute」が、2020年11月30日に初めたばかりの新しいサブミットサービス「lute selection」です。
YouTubeのチャンネル登録者数は10万超え、Instagramのフォロワー数は4万人近く。結構な影響力を持ったサブミッションメディアといえます。
非常に面白いのは、日本マイクロソフトが開発したAI「りんな」がアートワークを作成し、YouTube動画として公開してくれる点です。
「りんな」は日本マイクロソフトが開発しましたが、今はrinna株式会社として独立し、歌手活動もしています。
なんだかすごいですね(笑)
AIりんなは歌詞の意味などを読み取って独創的なアートワークを創り上げてくれるみたいです。単純にどんなアートワークになるのが気になりますね。無料で依頼できるのでぜひしておきたいサブミットサービスです。
FRIENDSHIP.
FRIENDSHIP.はAppleMusicやSpotifyなど様々な音楽サブスクでプレイリストを公開しています。
FRIENDSHIP.にサブミットを依頼すると、FRIENDSHIP.に所属しているキュレーターが審査して、それぞれのプレイリストに取り上げてくれる、という仕組みのようです。
キュレーターには、2019年7月に解散した「ねごと」のギタリストMizuki Masudaさんや、「yonige」のサウンドプロデュースも務めるギタリストKazunori Mizoguchiさん、他にもバンドマンやライブハウスのブッキングマネージャー・イベンターなど、音楽関係者がたくさんいます。
たとえ取り上げられなくても、そうした人たちに自分たちの音楽が聞いてもらえるだけでも価値がありそうですね。
こちらも無料でサブミットを依頼できます。
ちなみにFRIENDSHIP.はただのサブミットサービスだけでなく、海外のライブブッキングやリリース、その他プロモーションの協力など様々な方法でアーティストをバックアップするレーベルのようなサービスも用意しています。
サブミットサービスを使わなくてもサブミットはできる!
今回はサブミットサービスを8つ紹介しました。やはりまず使いたいのは自身がデジタルリリースで利用しているサブスクが公式で提供している〇〇 For Artistです。
公式なだけあって取り上げてもらえる可能性は低いかもしれませんが、もし取り上げられたら爆発的な影響力がありますし、取り上げられなかったとしてもTunecoreなど一括サービスでは使えない様々な機能が使えることは魅力です。
その他にもいくつか紹介しましたが、ほとんどが無料で利用できるので、正直、やらない手はないんじゃないかと思います。
もう一つ、サブミットで知っておいてほしいことは、日本ではサブミットという文化・市場はあまり大きくありません。しかし、サブミット自体はもっと個人単位でもできる、ということです。
SNSでよくミュージックビデオや曲を紹介している人・YouTubeやブログで音楽の紹介をしている人がいたら、ぜひメールを送ってみてください。彼ら・彼女らも新しい良い曲を一生懸命探しているので、アーティストから連絡があるのは嬉しいと思います。実際、それで良い曲だったら彼ら・彼女らが紹介しない理由はありません。
なので、サブミットサービス・サブミッションメディア・キュレーターなど固いことを言わずに、趣味で音楽を発信している人にぜひ「Submit=提案」してみましょう!
それではまた。良い音楽ライフを。