King Gnuやべえわ|Vinylと飛行艇だけ

King Gnuやべえわ|Vinylと飛行艇だけリスナー向け

どうも、ヤスイです。

音楽家に必要な才能はリズム感でも音感でもなく、どこまで音楽を深く聴きこめるかだと思ってます。
ということで今日はKing Gnuを聴きこんでみようかと。

初めてKing Gnuという名前を聞いたのは2017年の秋ごろ、僕が大阪に来て、音楽とか全然やってない頃。適当にYouTubeを回してたら出てきた「Vinyl」だった。
これは面白い音楽だなと思って何度か聴いてしばらく忘れていたら、周りでもちらほら名前を聞くようになって、2019年3月17日、大阪心斎橋BIG CATのライブを観に行った。Hecatoncheir sistersが始まる少し前。僕自身、かなりブランクがあったから勉強になるかと思ってPA席のすぐ横、音が良くてステージ全体、お客さんのノリも俯瞰して見える位置にいた。

King Gnuのライブを観たことある人はわかるとおもいますが、彼らのライブは一つの映画くらい作り込まれています。ここまで印象に残るライブは7年ほど前にみたセックスマシーンくらいです。

それからはご存知の通り、バカ売れしてますね。僕も彼女が買ってきた「CEREMONY」をよく聴いてます。ドラマ主題歌にも使われていた「白日」、超絶いいメロディに荒いアコギが印象的な「Teenager Forever」など、名曲揃い。

King Gnuの3rd Album「CEREMONY」


King Gnuの3rd Album「CEREMONY」発売3日間で16万枚、1週間で24万枚近くも売り上げた。

そしてこちら、初回生産限定盤に付いている映像がいいです。「Sympa」のリリースツアー公演が収録されているんですが、何度でも見れます。すごい。

前置きはここら辺にして、曲を聴いていこうと思います。King Gnuの出す音は理解の外にあるのでどこまで聴きこめるかわかりませんが、精一杯頑張ります。
後でKing Gnuの歴史とか、メンバーのキャラクターとかも簡単に紹介しますが、そんなことよりまずは曲。

出会い頭に右フック|Vinyl

ドラムのグルーブ感、異常

まあまずはこの曲でしょう。ブレイクのきっかけにもなった「Vinyl」です。MVもすごいんですが、まずは曲。特にドラムのビート。ブラックミュージックっていうんですか、最初のドラムのリズムのよれ。明らかにキックが遅れて入ってきている。いや、早いのか。3泊目が早すぎて他が遅れて聞こえるのか。よくわからないが、このグルーブ感。
グルーブ感といえば聞こえはいいですけど、リスナーの鼓動を外して一気にKing Gnuの世界観に惹き込ませる。ドラムがやってることは基本のビート。ハイハットが8分を刻んでスネアが3拍目に入って、キックが1拍目と4拍目の裏に入ってくる、超基本ビート。
それをあえてリズムのよれ、タメを持たせることで、しっかり世界観が出ている。こういうのをグルーブっていうんでしょうけど、なかなかお目にかかれないレベルです。

そしてワウのかかった小洒落たギターフレーズ。ベースはビートを支えるだけで余計なことはほとんどしない。曲の始まりとしては最小で最高のイントロ。
Aメロに入ると最小だったところからさらに削ぎ落として、ドラムが入ってくるところから低音のシンセ的な音とベース。ここまで本当にベースがいい仕事してる。ギターやシンセのニュアンスを一切邪魔せず、ドラムのグルーブに沿って必要な音を必要なところにだけ入れてる感じ。大人というか、頭の良い人の曲の作り方です。

ベースがいい仕事しすぎている

そしてサビ。ドラムは相変わらず基本のビートをグルーブ感満載で叩いてるだけ。ギター2本もストロークの回数が増えただけでそこまで変わったことはしていない。
にも関わらずサビで一気に広がるのは、コーラスはもちろん、ベースですよ。いやこの曲、ベースがいい仕事してる。これまで最小最小で曲をサポートしていたベースが、サビに入った途端、絶妙な音運び。「ドゥードゥーダーダードッドードゥーダー」みたいなとこ。いや、テキストでこんなふうに打って伝わるとは思ってないんですが、サビ始まりのこの部分がめちゃくちゃ気持ちい。

King Gnuやべえわ|Vinylと飛行艇だけ

ちょうど井口がこんな顔してるところ。ベースよく聴いてください。めちゃくちゃいい仕事してます。

綺麗と汚い、健全と退廃

Vinylだけじゃなくて、King Gnuの曲は多くがそうなんですが、井口のクリーンボイスと常田さんの拡声器を通したガレージサウンドの掛け合わせがいい素晴らしい。この曲だとサビの部分がそうですね。井口はクリーンで普通に歌がうまい、一方常田さんはいろんなエフェクトが入って退廃的というか、うん、ガレージサウンド。綺麗と汚い、女性的と男性的、健全と退廃、ボーカル2人がこうした矛盾するものを絶妙に組み合わせている。

ところで、Vo.Gtの常田さんは「常田さん」ってさん付けするのに、Vo.Keyの井口は井口って呼び捨てにするのなんでなんでしょうね。僕だけじゃなく周りもそうです。みんな井口、井口って言ってる気がする。逆に常田さんを常田っていう人あんまりいません。なんなんでしょうね。

構成はJ-POP、歌謡曲の王道

Vinylの曲構成をざっくり書くと

イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏(イントロと同じ)→Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→間奏(ギターソロ)→サビ(落とす)→サビ(上げる)→アウトロ

という非常にベタ、邦楽的な構成です。Bメロで落としてサビで一気に盛り上げる感じ、2番のサビの後にソロやって落としたサビやってラスサビにピークを持ってくる感じ。ベタというか、J-POP、歌謡曲の世界では使い古された構成。
これで新しいとか、革新的だとか言わせるんだから、King Gnuは相当やばいですね。

コードもディミニッシュコード中心に面白い作りをしてるんですけど、ロックでは珍しいけど歌謡曲にはよくありそうなイメージ。

じゃあ何がすごいんだって、引き算だと思います。
ドラムはグルーブ感出すためにずっと同じことやってる。フィルなんかの飾りフレーズは最小限。キックとスネア、ハイハットで9割叩ける。サビ前とか転換の時にクラッシュ鳴らすくらいでシンバルはほとんど使ってない。曲調が大きく変わるCメロでも、ビートは同じ。ハイハットの入れ方がちょっと違うだけ。タムとかほとんど使ってなさそう。
ベースもそうですね。同じことをやるべきことは同じように弾く。Aメロは1番2番でちょっと変えてますけど、サビは1番2番ラスサビ、ギターソロ中もほとんど同じ。アウトロ前半の盛り上がる部分の音階もすごくいいんだけど、めちゃくちゃ基本通り、スケール通りに動いてる。多分。このベースの人がどういうバックグラウンド持っているのかわかりませんけど、サザンオールスターズの「TSUNAMI」を思い出させる大人の音楽。つまり、そのレベルの人だということです。King Gnu、このベースさえいれば40年続くバンドになるぞ。

ボーカルとコーラスの足し算引き算も他ではなかなか聴いたことがない。井口と常田さんの声質の違いがあって初めて成り立つものとは思いますが、サビには2つのコーラスが入っていて、高音とノイジーな声。高音もノイジーな方も、この曲全体に出てくるんですが、同じ声でも厚みを足すために使われている部分、薄さを出すために使っている部分が違うんですね。
Aメロの高音コーラスは曲を薄くするために使われていて、儚さとかそういうニュアンスが出ている。一方、サビの高音コーラスはメロディに勢いを出すために使われている。なんで同じような声が違う役割果たせるかって、ベース、ドラムの造りはもちろん、もう一つのノイジーな拡声器を通した声が役割をコントロールしているんです。

いやあ、すごい。完成してしまえばこれしかないという造りになっているんですが、ネタ段階でこの完成図を描けるかというとまずムリ。尋常じゃない想像力があるか、DTMで一個一個作り込んでいるか、適当が生んだ奇跡か、そのどれか又は全部です。

Vinylの何がすごいって、ちゃんとJ-POPなところだと思います。ミクスチャー系の音とかいろいろ斬新に魅せておいて、J-POPの王道から外れていない。キワモノ扱いされているのに、「ジャニオタだけどKing Gnuも好き」「今だったら髭男か米津玄師かKing Gnuだよね」という人が多いのはKing GnuがちゃんとJ-POPだから。

ということで歌詞を簡単に紹介。

貫いてこの心を思い切り突き刺して
火照ったままで知らぬふりはもうやめて

暇つぶしには飽きたのよ
纏ったビニールを脱がせたいの
お前の思惑から無邪気に抜け出して

“さよなら、愛を込めて”

MVにはタイプの違うエロめお姉さんが二人。余談ですがこのMVを制作したのは、PERIMETRON(ペリメトロン)というクリエイター集団で、Gt,Voの常田さんが主宰。常田さんはKing Gnuの作詞作曲も全部やってるわけですが、才能の総量がとんでもない。

歌詞の中では「ビニール」が自分を殻に閉じ込めるもの、自由にしたいのに纏わり付くものとして使われています。MVの中ではメンバーそれぞれがビニール袋を被せられていくわけですが、MVのストーリーとしては自由を謳歌したバカ男が女性に復讐されて殻に押し込められるみたいなイメージでしょうか。

Vinyl|King Gnu

金髪アイシャドウのお姉さんにビニール服を被せられる井口。興奮した状態でこんなことされたら死にます。女性の恨みは怖い。

「知らぬふりはもうやめて」とか「暇つぶしには飽きたのよ」は殻被ったうわべの付き合いはもううんざり、本音を見せろみたいな感じ。

気の済むまで暴れなよ
哀れだろ?むしゃくしゃするぜ
喧騒に上がる煙に飛び込んでいくだけさ

「遊びがないの、あなたには」
なんて適当に言葉侍らせて
喧騒に上がる煙に薪をくべろ

いろんな解釈ができる歌詞ですが、結局は相手に関する願望ですかね。好き勝手やっても哀れにしか見えない。喧騒、ごちゃごちゃしたものの中に飛び込んでいくしかできない。
だから「遊びがないの、あなたには」とかそういう焚きつけるようなセリフで煽って欲しい。そんな雰囲気。

最近売れる曲って、東京をテーマにした曲が多い気がします。東京という良くも悪くも特殊な空間で、どう感じるか。ある人は出会いとか、故郷への思いとか、狭い空、無数の人、希薄な関係なんかを歌ったりします。
King Gnuも東京なのかわからないですが、都会的な歌。ただし見ている部分が違う。東京の汚い部分、みんなが唾を吐き捨てるような場所。普通に歩いていても見つからない、日が射さないような場所。そんな場所に対して歌っている印象ですね。

今日も軽やかなステップで
騙し騙し生きて行こうじゃないか
真っ暗な明日を欺いてさ

誰に向けたナイフなの?何に突き動かされてる?
苦しいだけの“現実”はもう止めて

“さよなら、愛を込めて”

さっきまでビニールを脱ごうとしたのに、2番に入るとビニールを被ったまま、うわべだけで生きていこうという内容になります。ただ自分の中、ビニールの内側にあるものは誰かにナイフを向けて何かに突き動かされている。ただそんなの苦しいだけだから、ビニール被ったままでいよう。どうせ明日も真っ暗だから。
そんな風にも受け取れますが、2番のサビでは完全にビニールを脱ぎ捨てちゃってますから、ちょっと違うのかもしれません。

とまあこのまま全部の歌詞を解説してもいいんですが、ここら辺でおいておきましょう。本来、歌詞解説とかするべきじゃないんです。その人の頭の中にあるものは誰にもわからないですし、本人以外が適当なことをいう資格もない。
あくまでも僕はこの曲を聴いてそう感じた、という程度に思ってもらえたらと思います。

歌詞とか曲の構成とかいろいろ見てきましたけど、「Vinyl」はありきたりなテーマ、構成で、他の人が目を向けないところを歌った曲だと思います。都会の光が刺さない部分、でも故郷の田舎を歌ってるわけでもなく、東京の地下から一歩も出ていない。だから面白いんでしょうね。

しかしやばい。5曲くらい紹介しようと思って書き始めたんですが、Vinylが想像以上に長くなってしまいました。まあここまで読んでくれている人は相当なマニアだと思うので、気にせず続けます。

King Gnuのメンバーについて。

King Gnuメンバーは高学歴ハイブリッド
音楽に学歴は関係ないとか、いうのは勝手ですけどやっぱりちゃんと学んだ人間は強い。King GnuがJ-POPの基本を忠実に守りながら、これだけ革新的な音楽を創れているのは、メンバーがかなり音楽をしっかり学んでいるから、というのが少なからずあると思います。

まず学歴というか、基本的な経歴を紹介するとこんな感じ。

常田 大希(つねた だいき)
作詞作曲、ギター、ボーカル、チェロ、コントラバス、ピアノ、プログラミング、トラックメイキング担当。1992年(平成4年)5月15日生まれ、27歳。長野県伊那市出身。伊那市立伊那北小学校、伊那市立東部中学校、長野県伊那北高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部器楽科チェロ専攻に進学するが、「社会と結びついた音楽をしたい」という理由で中退。

勢喜 遊(せき ゆう)
ドラムス、サンプラー、コーラス担当。1992年(平成4年)9月2日生まれ、27歳。徳島県阿南市出身。プロミュージシャンの両親を持ち、幼少期から家にあった電子ドラムを叩いていた。小、中学生時代にはダンススクールに通い、ダンサーを志望していた。

新井 和輝(あらい かずき)
ベース、シンセベース、コントラバス、コーラス担当。1992年(平成4年)10月29日生まれ、27歳。東京都福生市出身。東京都立青梅総合高等学校を経て、東京経済大学卒業。
14歳よりベースを始める。高校入学後、日野賢二に師事。大学時代も音楽に没頭し、友人のいる国立音楽大学に通って授業を受け、音楽の知識を得る。

井口 理(いぐち さとる)
ボーカル、キーボード担当。1993年(平成5年)10月5日生まれ、26歳。長野県伊那市出身。伊那市立伊那北小学校、伊那市立東部中学校、長野県伊那弥生ヶ丘高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。兄は声楽家の井口達。

まず常田さん、作詞作曲、ギター、ボーカル、チェロ、コントラバス、ピアノ、プログラミング、トラックメイキング担当って、器用すぎますね。打楽器以外全部任せろと言わんばかりのポテンシャル。東京藝大音楽部でチェロ。見た目だけじゃなく経歴まで色っぽい。
勢喜さんは両親がプロミュージシャンで、新井さんは日野賢二さんに師事したとか書いてますけど、ミリオンセラー級の作品に関わっている方。どうやって師事するんだ。
そして井口もしれっと東京藝大音楽部で声楽科。

物凄い高学歴、ハイブレッドなメンバーです。常田さんは小澤国際室内楽アカデミーにチェロ奏者として在籍してるとか、アニメ「血界戦線」のサウンドトラックにチェロ演奏、アメリカ版「ポケットモンスター」などいろんな作品の音楽に参加してるとか、リットーミュージック最強プレイヤーズコンテスト2009にベース部門で準グランプリ(ベース弾けるなんてどこにも書いてない)とか。もはや偉人。
勢喜さんも奥さんが三味線奏者とかもうよくわからない。どこで出会ったのよ。

メンバーの面白い経歴を紹介しようと思ったんですが、だめですね。シンプルにすごい人たちでした。

次、曲紹介します。

圧倒的ストーリーテリング「飛行艇」

こちらも代表曲の一つ、飛行艇。ライブでは超盛り上がる。これもまたドラムが素晴らしい。自分のスキル、フレーズの引き出しを出そうという気が一切ない。4分音符に合わせてキックとスネアとハイハットが延々鳴ってる。抜くところはキックだけになるけど、それだけ。サビ前とサビ途中に8分が入って、ラスサビ前はちょっと工夫したビートが登場するけど、本当にそれだけ。最後、サビが連続する部分、連打でも入れるかと思いきや音を抜くという発想。素晴らしい。というかこの曲はもう全部サビ。どこで盛り上がるとかあんまりない。全部が全部、違ったニュアンスで盛り上がりを演出している。

この大坂なおみが出演するANAのCMもいいですね。「ひとには、翼がある」「それを使うか、使わないか」というシンプルなメッセージ。この曲自体もメッセージ性は非常にシンプル。「ヒーロー」です。

歌詞とかは後で紹介するとして、まずは音。サビのメロディに合わせた歪み全開のギターリフ。素直にコードストロークを弾くAメロ。ベースは何やってるのかよくわからない。サビ中もギターがリフを弾いていて、井口の声と常田さんのダミ声と合わせてメロディインパクトがすごい。威風堂々、ヒーローものにぴったり。すごく力強く背中を押してくれている。
ずっと同じビート、同じメロディなのになんで飽きないんでしょうね。Aメロは常田さんが歌って、後半で井口がコーラスで出てきて、サビは井口がメインを歌う、Cメロでは逆に井口メインから常田さんのコーラスが入ってきて、という意外と複雑なボーカルの絡みもあると思うんですが、それだけじゃないでしょう。すごい曲です。

MVが秀逸だから30回は観れる

MVも映像作品として秀逸。飛行艇という空がテーマの曲なのに、空が一度も出てこない。円形の長い廊下をただグルグル回っていて、その中でストーリーが出ているんですが、登場人物に統一感は全くない。

King Gnu_飛行艇ミュージックビデオ

ヒーローのカッコをして少年が歩いていくんですが、ホームレスに絡まれたり、黒服のヤクザにぶつかったり、非常に退廃的な街。走って隠れたと思ったらなぜか同じ少年がまた出てくる。そして夫婦かカップルか、この子の両親か、男女二人が激しく喧嘩しているのを影から見つめる少年。サビに入ったらさっきのホームレスからヘッドフォンを奪い取ってからかう男女。黒服に追いかけられる男、黒服から借金の催促状でも見せられているのかうつろな女性。黒服に影に連れ去れれる男。座り込んで音楽を聴く男女。
ここまでがワンカット。ゆっくり曲がる廊下を一定の店舗で追いかけている。同じ人が何度も登場して、時には1つのカットに同じ人が2人映ることも。

King Gnu_飛行艇ミュージックビデオ

2番に入ると少年はヘッドフォンを手にとって、常田さんの輪郭のない叫ぶようなソロを目撃。次のシーンでは喧嘩している男女を少年が止めようとしていて、でも同じ少年は一定の距離をとって立っているだけで。その近くにはストリートミュージシャンがファンに囲まれて歌っているんですが、次の瞬間、警察に解散させられて別々に演奏。

まあこんなふうにそれぞれのカットを紹介していくとキリがないんですが、社会の闇というか、暗い部分、汚い部分、理不尽な部分が詰まったストーリー。

飛行艇というタイトル、力強いメロディからは想像つかないくらいアングラな世界観。
途中から少年はギターやベースを持ち、自分自身で何かを表現しようとしている。井口になにかを訴えかけられ、変わろうとしているのか。でも次のシーン、少年は弾くのをやめてしまう。

King Gnu_飛行艇ミュージックビデオ

ラスサビ、走って駆け込んだのはKing Gnuが多くの人(これまで出てきた喧嘩してたカップルや警察、ヤクザみたいな人とか)の歓声を受け演奏しているシーン。それを見つめる少年は家に帰ってガッツポーズ。

前半、少年はいろんなものから逃げるだけだったんですが、徐々に喧嘩を止めたり積極的に絡んでいくように。楽器を拾って練習して、挫折して。大人の汚いところいっぱい見て…
でも最後に見たのは音楽を通じてみんなが一つになっているところ。最後のガッツポーズは、自分もKing Gnuみたいなヒーローになるという決意かもしれませんね。

ヒーローになろうと家を飛び出して、でも社会の汚い部分から逃げて、頑張って付き合っていこうとするんだけど、何もできなくて、でも自分ができなかったことを音楽という形で達成しているKing Gnuと出会って、という一本映画が撮れそうなストーリーがあります。

最近はどのアーティストもいいMV出してますけど、ここまでストーリー性がしっかりしていて、バンドが演奏する価値のあるものってあんまりないです。だいたいのMVはとりあえず的な感じで演奏シーンが入ってますが、このMVではストーリー上必要不可欠なものとして入っている。素晴らしい。

歌詞を見れば全てつながる

どんな夢を見に行こうか
正しさばかりに恐れ戦かないで
自由自在に飛び回って
ステップ・バイ・ステップビートを刻んで
果ての無いパーティーを続けようか

Aメロの歌詞。MVを観た後でこの歌詞を読むと全然違った印象があります。少年はヒーローになりたくて家を飛び出すわけですが、その決意と期待ですよね。物事の正誤にビビってないで、自由に飛び回る。自分はヒーローになるんだという夢と希望に溢れて始まります。

この時代に飛び乗って
今夜この街を飛び立って
大空を飛び回って命揺らせ命揺らせ

この風に飛び乗って
今夜台風の目となって
大空を飛び回って命揺らせ命揺らせ

MVの中は汚いものに溢れていますが、歌詞は常に夢に向かって背中を押してくれている。King Gnuらしからぬ、ストレートにひねりのない歌詞。中途半端な気持ちじゃない、本気なんだという覚悟が「命揺らせ」に詰まっています。
MVがノンストップで進み続けていることからわかるように、立ち止まる時間は一瞬もない。夢に向かって進み出したら、時代とか風に乗って進み続けるしかない。

代わり映えしない日常の片隅で
無邪気に笑っていられたらいいよな
無意味な旅を続けようか
ワン・バイ・ワン一歩ずつでいいさ
歓声も罵声も呑み込んで

ちょっとひねくれた歌詞にも感じますが、やっぱりまっすぐ背中を押してくれています。プレッシャーとか、挫折とか、後悔とか、まあ夢に進むということは決して楽しい事ばかりではない。まあうまく行かない、進んでいるように感じない時でも、笑っていられたらOK。応援してくれる人もいれば、否定する人もいる。そんなもんだから、とりあえず立ち止まらなかったらOKだよ。そんなニュアンスですかね。

夢を追っている人なら共感できる部分だと思います。毎日頑張ってもちっとも上達しないし、親とか昔の友達からは否定されるし。夢を追いかける上で何が一番難しいって、続けること。辞めずに続けることが一番難しいし、それができたらどんな分野でもある程度の成果は出せる。
何かを諦めたくなったら聴きたくなる曲、歌詞です。

この時代に飛び乗って
今夜愚かな杭となって
過ちを恐れないで命揺らせ命揺らせ

この風に飛び乗って
今夜名も無き風となって
清濁を併せ呑んで命揺らせ命揺らせ

「愚かな杭」という表現がすごいですね。1番は「台風の目」とか、いかにもやってやるぞというニュアンスがあるんですが、2番では「愚かな杭」「名も無き風」です。
夢追いかけて頑張っても報われる事ばかりじゃない。ただ愚かでいいから何か突き刺せよ、ビビってないで杭を打ち込めよ。全クリエイター、夢追い人に聴かせたい。

まあ「Vinyl」と同じく、この曲も歌詞を全部解説して意味があるかといえばないです。あくまでも僕が曲を聴き込むついでにやってるだけのこと。そんな意味じゃないでしょう、とかいろいろ意見があると思いますが、まあそれは一つの作品を自分の腹の中でどう消化するかといった話なので、置いときましょう。

「飛行艇」というタイトルですが、いっそ「滑走路」というタイトルにした方がいいんじゃないかと思うくらい、まさにこれから飛び立とうとしている曲です。まだ世間で認められていないクリエイター(認められている人の5000倍くらい認められていないクリエイターがいる)はこの曲を聴いてどう感じるんでしょうね。
最も僕も認められていないクリエイターの一人ですが、30回聴ける曲だと思いますし、こんな記事描いてる暇があるならギター弾こうってなってきます。人の行動に影響を与える数少ない名曲。

King Gnu聴き込んだら見所多すぎて長くなる

今日はこの辺にさせてください。King Gnuを聴き込んで、自分の音楽にも落とし込めないかなーと意気揚々と取り組み始めましたが、約4時間かけて2曲しか聴けなかった。
というのもKing Gnuの曲は聴き込むところが多すぎる。単純なのに奥が深いビート、必要最低限かつ十分なニュアンスを表現するベース、シンセ。そして常田さん、井口、個性が全く違うボーカル2人。そして常田さんが主宰するPERIMETRONが創る映像作品。

2曲でお腹いっぱいです。よくアルバム通して聴けますね。僕は無理。2曲ごとに休憩挟みたい。

なので休憩挟んでまた書きます。ヤスイユウヤが書くKing Gnu第2段。僕みたいに銀杏BOYZ聴いて育った人間がKing Gnuについて書くというのもおもしろい、と勝手に思ってる。

次紹介するとしたら「白日」「Prayer X」あたりですかね。体力があれば「Teenager Forever」も紹介したいと思います。

それでは、またいつか。

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