コロナ禍の音楽制作|走りながら生んだ33曲

コロナ禍の音楽制作|走りながら生んだ33曲プレイヤー向け

どうも、ヤスイです。

ご存じの方もいると思いますが、僕のバンド、ヘカトンケイル・シスターズは2020年3月にツアーを中断。その後、極端にも「2020年内の自主的屋外活動の自粛」を発表。
「家から届けられる音楽を」ということで、ゴリゴリのライブバンドだったはずが一転、宅録でDTMをいじくる日々が続きました。

その辺の経緯については「新型コロナとバンドマンとライブハウスと」という記事で書いているので、ぜひ読んでほしい。

で、今日書きたいのは「宅録ってどうよ?」「コロナって、実際バンドマンにとってどうよ?」「それで売れんのか?」という部分。

今年5月に始めた自粛期間も、もう7ヶ月目。
この間に作った曲はなんと33曲。公開したミュージックビデオは3本(もうすぐ1本追加する)。

5月から毎週公開していた「週イチリモートセッション」その第24弾。

これは7月に公開した「シロップ」
宅録でほんとにできんのか、ミュージックビデオどうするよ、という状態でイラストレーター(アニメーター)のムルヒさんと出会って完成。これが完成するまでの期間、本当にバンドメンバーと一度も会ってない。

まあこうした作品を生んできたわけですが、この姿勢は多くのバンドマン、関係者、ファンにとって、色々と思うところがあるんじゃないかなと。

賛否両論ね。僕らが自粛を発表したとき、直接は言わないだろうけど何度も出演してきたライブハウスからは、もしかしたら「裏切り」だと思われたかもしれない。もちろん、ライブハウス関係者やイベンターからは「応援するよ」という声も多くいただいた。

じゃあ、今僕らは(というより僕は)この期間の活動についてどう考えているのか、それを書きたいなと。

コロナ禍における音楽活動の決断

現在、屋外活動を自主的に自粛しているヘカトンケイル・シスターズは、2020年3月20日、東京代々木Laboまで、2nd mini Albumのリリースツアーを敢行していた。

現在、屋外活動を自主的に自粛しているヘカトンケイル・シスターズは、2020年3月20日、東京代々木Laboまで、2nd mini Albumのリリースツアーを敢行していた。

まず、そもそも僕らが「自主的屋外活動自粛」を決めた理由。
これって、今第3波とか言われているからともかく、その時点では夏には大丈夫だろう、という意見も多かった。東京オリンピックも開催予定だったし(たしか)。

そんな中、なんで極端にもライブバンドがライブしないって決めれたかって、やっぱり「半端なことはしたくない」っていうのが大きい理由。

もちろん、コロナの影響とかはあるんだけど(お客さんを危険にさらすわけにはいかないしね)、それは置いておいて。

ヘカトンケイル・シスターズはそもそも「結成したら1年で50本ライブをやる」っていうモチベーションで始まってる。1年で50本って結構です。毎週1本はやるってことだからね。
で、古臭いロックバンドらしく、ちゃんとCDもプレスしてリリースする。やっぱCDっていう形が好きなんだよね。僕らは。

とにかくライブをしよう、ということで、出られるライブは全部出たし、全部の活動は最高のライブをするために向かっていた。

とにかくライブをしよう、ということで、出られるライブは全部出たし、全部の活動は最高のライブをするために向かっていた。

そんな風に始まって、2019年5月の結成から屋外活動自粛までの間に、30数本のライブと、2つのアルバムをリリース。1つのツアー。

まずまずのライブバンドぶりなんじゃないかなと思います。

こればっかりは、好きだからとしか言いようがない。
ライブやツアーより収益化しやすい活動なんていくらでもあるし、CDをプレスするなんて、赤字覚悟で決めてる。

そんな風に「ライブバンド」って自負が一応はあったから、ライブに対して半端なことはしたくない。
やるなら全力でやりたい。

で、3月頃、コロナがやばいなーって雰囲気の中、全国をツアーで行ったり来たり。当然、車の中ではコロナの話ばかり。

余談だけど、その頃、1本7000円の消毒液を物販の箱に2本入れて全国を回ってた。今考えると馬鹿らしい出費だけど、本当にあのときは「ライブをするなら対策だけはしとかないと」っていうので、メンバー3人で色んな所を回って消毒液を入手した。
マスクはベースのドウチの両親から送られてきたので、非常に助かった。

ヘカトンの物販風景。写真の右上には1本7000円で購入したクレベリンが2本。そうでもして、ライブを続けたかった。

ヘカトンの物販風景。写真の右上には1本7000円で購入したクレベリンが2本。そうでもして、ライブを続けたかった。

で、一番大切にしたのは「僕ら自身が気持ちよくライブできるか」ということ。
ライブを続けることはできるけど、僕ら自身が胸を張って「ライブやるから見に来て」って言えるか。

そう考えたとき、無理だった。

どうしても、ライブハウスを助けるためにとか、別の理由が出てきてしまう。心配するなとも言えないし、安全ですとも言えないし、自己責任でヨロシクなんてのも言えない。

僕ら自身が気持ちよくライブできない。楽しませるからライブに来てって胸を張って言えない。

それは、ライブバンドとして「半端なこと」なんじゃないかな、と。

2020年内に決めたのは、キリが良かったからというだけ。だって当時は「夏になったら大丈夫」っていう人も、「ワクチンができるまではやばい」って人も、いろいろだったから。今もそうだけど、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後にどうなっているかなんて誰もわからない。

自主的屋外活動の自粛については、こんな考えがあったわけです。

コロナ禍の音楽制作が生んだもの

コロナ禍で行った音楽制作は大きく2つ。
イメージとしては、こんな状態でも音楽届けるよって姿勢を伝えたかった。

週イチリモートセッション

1つは週イチのリモートセッション。これはリモートセッションと言ってるものの、ラフなレコーディング。大体の曲は僕がギターリフとざっくりした構成を作って、それをメンバーで聴いて、必要であれば調整。その後、ドラム、ベース、ギター(本録り)、ボーカルを入れていく、という感じ。
うちはドラムがサポートだから、最初ドラムは打ち込みでやってた。途中からはクオリティとか色々考えて、いつもサポートしてくれてるカワチさんに叩いてもらった。

セッションっていうくらいだから、雑味が大事だろうということで、基本的には一発録りで、あんまり凝った編曲はせず、ライブ感を伝えたいなと思ってやってた。
これは正直、ライブバンドとしてのあがき。ライブがしたい。でも、僕ら自身が気持ちよくライブできないからって決めたんだから、それを全部ここで出してやろうと。

これは第1回の映像。今見ると、音も映像も未熟(笑)

一発録りとはいえ、もうちょいできるだろう、という感じがすごい。今聴くと恥ずかしいレベルだけど、正直、初めて聴いたときは「意外といけてるな」と思った。

全員、宅録自体初めてだし、ドウチもほぼ素人の状態でCubaseを使ってミックスしてくれた。
見ての通り、スマイは防音の耐め毛布をかぶって歌ってる。

やり始めたときは「本当に曲完成すんのかな…」という状態だったから、こんなのでも満足感はあった。

で、それからみんな慣れてきて、ドウチもミックスのコツを掴んで、いろんなことを試すようになってきた。

これなんか、ヘカトンのスタジオセッションではまず生まれない雰囲気の曲。

僕自身も、たまにこういうリフを弾くんだけど、まさかヘカトンで曲として世に出すとは思ってなかった。

これはピアノにチャレンジ。

ぶっちゃけ、僕は小学生の頃ピアノを少し習ってただけで弾けない。だからこれも左右別々に弾いてる(笑)
でも、そんな状態でも曲になる。人に聴いてもらえる。音楽って、上手い下手じゃないな、と下手くそがいうと説得力がないが、そう思う。

あと、昔スマイが作って、リリースしていなかった曲をお披露目する機会も創れた。

この曲はグレイモンスターという曲名で、リリース予定だった。ただ、色々と予定が狂ったのもあって、お蔵入りになるところだった。そういう曲に光を当てられたのもこの企画の嬉しいところ。

こんな感じで29曲。本当は年末までに33曲くらい出す予定だったけど、今月、ドウチが急遽、自宅療養に入ったので停止。これについてはまた後で触れようと思うけど、この企画が途中で止まってしまったのは、正直残念。最後までやりきりたかった。

この企画での一番の学びは、やってみれば案外できる、ということ。

宅録なんてやったことなかったし、そもそもスタジオで合わせずに曲を作ったこともないし、ボーカルを最後に入れる、というのも初めての経験。どんなボーカルが入るのか、ギリギリまでわからないって結構怖いこと。しかも、半年かけて6曲入りのミニアルバムをリリースするのに一生懸命なのに、毎週リリースするなんて。

こうして事実を並べると、できる理由が見つからない。

音質めちゃくちゃで、曲としてもバラバラで、歌もうまく乗ってない、週イチを守るためにめちゃくちゃクオリティの低いものを出しまくってしまうんじゃないか、そういう懸念もあった。

でもやってみると、これは作り手の勝手な満足感なのかも知れないけど、そのままリリースしてもいいと思える曲もあるし、ライブでやりたい曲も多い。

確かに最初はクオリティが低かったけど、やってるうちにみんな成長して、そこそこのクオリティになってくれた。

やってみれば案外できる。

このマインドはすごい大事だし、事実だなと思う。

フルリモートリリース

もう一つはフルリモートでの楽曲リリース。まあリモート撮影のミュージックビデオとかは、コロナ禍で増えたけど、曲作り、レコーディング、映像制作、全部をフルリモートでやるバンドって、なかなかないんじゃないかな。

僕らは自主的屋外活動の自粛ということで、メンバー間で会うことも規制していたから、これは本当にしんどい部分も多かった。
なにはともあれ作った曲を聴いてほしい。

5月の自粛発表から生み出したフルリモートリリース曲は全部で3曲。
そのうち1曲は12月末に公開するから、まだ世には出してない。

まずは「シロップ」

7月12日、フルリモートリリース第一弾。
何事も1回目は本当に大変。宅録のときのオーディオインターフェースの設定とかね。どういう形でデータをやり取りするのかもエンジニアと何度もミーティングしたし、ボーカルの録音環境とかとくに。

そのへんの苦労話とかは次回書くと思うけど、一番は「コミュニケーション」ですね。
スマイがラフ作って「これどうよ」みたいな感じでLINEで音声ファイルが送られてくるんだけど、スタジオとかだったらともかく、それを聴いて、要望とかイメージ、提案を伝えて、、ってのがもう大変。

全然前に進まない。こんなのスタジオで一回合わせたら終わるのになってやり取りに何日もかかる。

なにはともあれ、音源は完成して、ムルヒさんというクリエイターとコラボすることで、正真正銘、家から一歩も出ずに音楽を届けたわけです。
そういう意味では、すごく重要な作品。こんな形の音楽制作があるなんて、しかもそれをヘカトンというライブバンドでやるなんて、考えたことなかった。

そして、第2弾「ビッグマックの余韻」

これも録り方は同じ。LINEで何度もやり取りして、全員イライラしながらなんとかコミュニケーションを取ってレコーディング。

そして、ドリーさんという素晴らしい絵描きとコラボして生まれた映像作品。ドリーさんが「ビッグマックの余韻」を聴きながら浮かんだイメージを絵にする、いわゆるライブペイント。
もちろん、僕らは撮影に参加していないから、出来上がるまでどんな作品になるのか、全くの謎。

新しいチャレンジとしては聴いてもらえたら分かるけど、キーボードが入ってる。これも、これまでのリリース方法だったら多分やってなかったチャレンジ。

この企画から学んだことは、顔を合わせてコミュニケーションすることの大切さ。
Zoomでリモート会議とか流行ってるけど、やっぱり顔を合わせて、できればスタジオで音を鳴らしながらコミュニケーションしたほうが、圧倒的に効率的。

この2曲、これからリリースする曲も、スタジオでやってたらまた違った曲になっていたと思う。
もちろん後悔はないです。それも含めて、「家から届ける音楽」だから。

「家から届ける音楽」で得た学び

と、ここまで書いてかなり長くなってきたから、今回は一旦ここまで。

次はこれのノウハウ的な部分を紹介したい。
そんなに細かい部分じゃないけど、「家から届ける音楽を」っていうのを達成するためにどんな機材や工夫があったのか、という部分。

確かなことは、ほとんどの人にとってコロナは他人事じゃなくて、人生を変える大きな出来事だということ。僕らも例外じゃない。これからヘカトンがどうなろうと、2020年はものすごく特別な1年として記憶されるはず。

あと、オマケ的な感じだけど、リモート撮影で公開した「やってもうた」のミュージックビデオも次回は軽く紹介します。
これはかなりのブラックジョーク。見る人によっては不快かも知れませんが、家から一歩も出ずに四苦八苦しているんだから、それくらいの遊びは許してほしい。

ということで、もしよかったらヘカトンがこの7ヶ月で生み出した音楽をぜひ聴いて欲しい。なんだかんだ言って、僕らは人に聴いてほしくて音楽を創って、それを世に出してるわけだから。

Hecatoncheir sisters:サブスク音源

Hecatoncheir sisters:Youtube

Hecatoncheir sisters:オンラインストア

ではまた次回。

第2弾:コロナ禍の音楽制作|スタジオ、ライブハウスの価値

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